クラシック音楽あれこれ

クラシック音楽のことをメインに語ります。

モーツァルト礼讃

作曲家の中には、モーツァルトを崇拝する者が少なくない。

ベートーヴェンもその一人だった。ウィーンで、作曲家としてよりまだピアニストとして活躍していた頃のエピソード。

ある晩、友人と街中を歩いていた時どこかの家からピアノの旋律が聞こえてきた。モーツァルトの曲だった。

先を行こうとする友人の腕を摑み、ベートーヴェンはうっとりとした様子で、

「聴いてみたまえ!我々の仕事は、モーツァルトの足元にも及ばないなあ」

賛嘆することしきりだったという。彼は後年まで、モーツァルトへの尊敬の念を隠さなかった。

「新世界」交響曲で有名なドヴォルザークは、音楽学校の校長に就任した際、講義でモーツァルトとは何者かと皆に問うた。

誰も答えない中、窓の外を見なさいと生徒たちに告げた。外は陽当たりの良い青空だった。

まだ、わからないかね。返事に窮していた生徒たちに向かって、彼は力強く答えた。

「覚えておきなさい。モーツァルトは太陽そのものです!」

リヒャルト・シュトラウスは、生前指揮者と作曲家を兼務していた。その体験もあろう。多くの曲をオーケストラの前で指揮していた。

そんな彼がしばしば語っていたのは、モーツァルト交響曲第41番「ジュピター」だった。

シュトラウスはこう語った。

「ジュピター交響曲は、私がこれまで聴いた交響曲の中で最高のものだった。
終楽章のコーダを聴いた時、私は天上にあるかのような心地がした」

最後にグスタフ・マーラー。生前は作曲家としてよりも指揮者として注目されることに、彼は不満を抱いていた。

「いつか私の時代が来る」

弟子のブルーノ・ワルターなどに予言めいたことを語ったが、生前は遂にベートーヴェンを意識した長大な交響曲の数々は評価されなかった。

世間の無理解と激務で心臓に爆弾を抱えた彼は、50歳でこの世を去った。

最期は病床で微笑みながら、こう叫んで事切れた。

モーツァルトモーツァルトモーツァルト!」

※このブログは、毎月第2、第4土曜日に配信予定です。

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