クラシック音楽あれこれ

クラシック音楽のことをメインに語ります。

カラヤン嫌いのあなたへ

新時代を背負って立つ存在だったからだろうか。ヘルベルト・フォン・カラヤンは、往年の名指揮者と称された先輩たちと折り合いが悪かった。

フルトヴェングラーカラヤン嫌いは病的とさえいえた。

大戦中、ナチスによって「奇跡のカラヤン」と大々的に持ち上げられ、フルトヴェングラー自身の地位を脅(おびや)かされた。

戦後非ナチ化裁判で無罪を勝ち取り、古巣のベルリン・フィルをまた振るようになった。

その際、たとえ客演であってもカラヤンベルリン・フィル接触しないよう、あの手この手で妨害した。

この若き指揮者は、首をすくめながらつぶやくのが常だったという。

私には時間があるからね」

事実その通りになった。

フルトヴェングラー没後、まんまとベルリン・フィルを掌握したカラヤンはその瞑想するが如き指揮スタイルで聴衆を瞠目させ熱狂させた。

暗譜ができることは、指揮者の必須条件みたいなものでそれ自体は別段珍しいことでもない。

たとえば、アルトゥーロ・トスカニーニなどはデビューした際極度の近眼だったため、暗譜でオペラを振りセンセーショナルな注目を浴びた。しかし暗譜自体は、後年になるほど嗜みのようなものとなった。

それでも暗譜できることを誇示するため、目を閉じてタクトを振る姿勢は見ようによっては虚仮威しとも受け取れる。ある指揮者がチクリと一言。

「だけど私は、楽譜が読めるからね」

ハンス・クナッパーツブッシュである。

アンチも多かったカラヤン。当然、その演奏に関しては賛否両論があった。

以下のエピソードは、その点を踏まえると興味深い。ある指揮者が演奏会を聴きに出向き終演直後、

「悪くないぞ、カラヤン!みんなが言うほど悪くないぞ!」

拍手をしながら大声でまくし立てた。オットー・クレンペラーであった。以来、カラヤンクレンペラーを終生憎んだという。

 

※このブログは、毎月第2、第4土曜日に配信予定です。

iPhoneから送信