クラシック音楽あれこれ

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ブラームスその愛と死:後編

クララ・シューマンは夫との間に、八人(長男は早世)の子供をもうけていた。夫ロベルトが亡くなったからといって、彼女には悲嘆に暮れている暇はなかった。

ピアニストとしてピアノ教師として類い稀な才能を発揮していたクララは、自らの腕一本で子供たちを育てていくことを決めた。

ブラームスは変わらぬ親交を、クララたちと温めていった。

あまりにその親密ぶりから、クララとブラームスは男女の関係にあると再び覗き見趣味的な噂が飛び交った。

それどころか、末っ子のフェリックスがブラームスとの間にできた不倫の子とまことしやかに噂する者がいたくらいだった。

クララは逆風に堂々と立ち向かった。いずれブラームスと再婚するのではとまことしやかに言う者もいる中、かつての夫の弟子と節度を保った関係を続けた。

むしろ現在におけるまで、クララとブラームスの恋仲を証明するものは出ていない。

下衆の勘繰りをする輩は、夫ロベルトの晩年の手紙と共に証拠を焼却したと思うだろう。

しかし二人の恋仲を証明するものが存在しない時点で、むしろブラームスの片想いと考えるほうが妥当だ。

考えてもみるがいい。ブラームスがもしもクララと男女の関係にあって、あまつさえ子供すら生ませたのなら男としての
責任を取るはずだ。

実際のところ、彼にできたのは誹謗中傷に悩むクララに友人として寄り添うことだった。これこそがブラームスなりの愛情表現といえる。

人によっては、特にアンチにとってはそういうブラームスの煮え切らない態度が嫌だと言う。

しかし愛の形は人それぞれだ。黙っておれについてこいと、ワーグナーみたいに強引にモノにするだけが愛ではない。傍らから見守るのも立派な愛だ。

ブラームスがいかにクララを愛していたか。クララの死から一年足らずで、この世を去ったことでも明らかだ。

純愛であったといえる。

※このブログは、毎月第2、第4土曜日に配信予定です。
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