クラシック音楽あれこれ

クラシック音楽のことをメインに語ります。

2020-01-01から1ヶ月間の記事一覧

威風堂々と

かつて文芸評論家の小林秀雄(1902〜1983)は、モーツァルトの交響曲第40番を聴いて「無常といふ事」という一文を書いた。 モーツァルトを聴いてそこに無常を見出すあたり、西欧文明に追いつけ、追い越せと息せき切って吸収した明治人らしい発想といえなくもな…

神か悪魔か

ハンス・クナッパーツブッシュ。彼の奏でる音楽を聴くと、時々人智を超えた神秘の世界へと誘われる気分になる。 たとえば1957年、フルトヴェングラー没後3年を追悼したベルリン・フィルとのブラームス交響曲第3番を聴いてみるがいい。 本来なら悲劇的なはず…

聖地へ

2002年8月某日、私は神戸に来ていた。先年の暮れに亡くなった朝比奈隆先生の追悼コンサートに行くためだ。 朝比奈先生や作家の筒井康隆が居住していたということで、神戸はいわば聖地といえた。 私が朝比奈先生の逝去を知ったのはたまたま偶然だった。その頃…

「第九」蠢動

毎年年末になると、恒例の第九が全国津々浦々で演奏される。どうして第九こと、ベートーヴェンの交響曲第9番はここまで私たちを惹きつけるのだろう。 普段はお客が入らなくて懐事情が苦しい楽団側が、年末の掻き入れ時に始めたのが走りとも言われる。 ベート…

朝比奈隆誕生の瞬間

1953年か54年頃の話だという。当時の西ドイツの首都ベルリンに、一人の中年日本人が訪れた。 年の頃が40代半ばであったから、普通の人間ならば人生の終着点が見えてもおかしくない。 だが、男は指揮者だった。敗戦後の日本には何が必要か。そのヒントを探る…

フルトヴェングラーという天才

「夫にとって、ベートーヴェンは神そのものでした」 ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(1886〜1954)について、未亡人のエリザベトは度々そう語っていたという。 "(生涯得意にしていた)ベートーヴェンですら神様扱いしていたのだから、ブラームスなど人そのも…

哀しみの向こう側

「ブラームスの(交響曲)第4番は名曲だよ」 専門学校時代の恩師のこの言葉がなかったら、私がブラームスに深入りするきっかけは遅くなったかもしれないしあるいは永久に来なかったかもしれない。 なにしろ当時の私といえば、宇野功芳の唱えるクラシック音楽観…

「運命」はかくの如く扉を叩く

ベートーヴェン交響曲第5番。俗に「運命」ともいう。ただしこの副題は、我が国日本だけのことらしい。 明治時代にこの交響曲が入る際、ベートーヴェンがこの曲を書いた経緯を弟子に尋ねられたところ、 「運命はかくの如く扉を叩く」 答えたエピソードがある…

昭和をなめんなよ

ウチの作業所は62歳から高校を卒業して入った18歳と年齢が幅広い。元々A型事業所自体、障害を抱えて一般企業では勤められない人たちが職業訓練みたいな形で働く場所なのだ。 私がそもそもこの事業所に入所したのも、正直一般の会社に入るのはまだリスクが高…

そりゃないぜ、宇野さん!

私がクラシック音楽に耽溺したきっかけは、ショルティ/ロンドン交響楽団によるベートーヴェン。交響曲第5番「運命」を聴いたのが始まりだ。 詳細はまた別の機会に述べるが、涙を流すほど感動したことが今日までクラシックを聴き続ける種となり核となった。 …